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行政書士 大瀧事務所

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新会社法の概要

2005.11

平成18年4月1日に施行されます「会社法」は、商法・有限会社法・商法特例法を一本化する大改正となりました。新しい会社法は全979条となり、さらに「会社法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」いわゆる整備法は全528条という膨大な法律になりました。

以下に主な特徴のみを列記します。

新会社法制定の趣旨

  1. 現状の会社運営と将来の会社のあり方に対応した法の整備による改正
  2. カタカナ・旧字体表現から、ひらがな・現代表現や解かり易い用語に改正

会社の形態

商法の規定は、原則的に株式会社を大規模公開型と想定し、各規定を設けています。しかし、現状は小規模・閉鎖型の企業が多く、商法の規定を適用するには過剰負担となっています。
そこでの利便性と機能性や信頼性を活用すべく、有限会社法を制定し、有限会社の設立を促して来ました。

新会社法は、物的会社を株式会社に吸収一本化し、その上で旧来の株式会社と有限会社のそれぞれの特質を生かす手法として、会社の業務監査や会計監査の面から会社の機関を整備することで、大規模公開型とするのか、小規模閉鎖型にするのかを会社設立者に任せることとしました。

また、株式会社は株主の出資に基いて成り立ち得る存在であり、株主の出資金は株主権を譲渡することで、出資金額を回収できる権利も認められています。このように株券の自由な流通も確保されていますが、好ましからざる株主の出現は、会社経営に負の要因にもなりかねません。

そこで、株券の自由譲渡を制限することで、安定的な経営を確保することも企業経営の一方法かもしれません。この「株式譲渡制限」を取り入れることは閉鎖的な株式会社として、小規模株式会社には大きなメリットがあるものと考えられますし、このような「株式譲渡制限」を設ける株式会社と設けない会社では、その機関のあり方に大きな相違があります。

有限会社について

新会社法の施行により、有限会社制度は廃止されますので、新たに有限会社を設立することはできません。現行法での有限会社は、新会社法で認められない会社として維持はできます。
そのような有限会社を「特例有限会社」とされ、新会社法施行と同時に当然に移行されることとなります。

【みなしの取扱い】

会社は全て「新会社法」に根拠を置くことになりますので、特例有限会社の諸規定は新会社法の規定に関するものとみなされる取扱いを受けます。

  1. 有限会社での定款、社員、持分、出資1口という文言は、特例有限会社での定款、株主、株式、1株とみなされます。
  2. 定款に株式譲渡制限の定めがあるものとみなされます。
  3. 監査役の設置がある場合は、監査役の権限の範囲を会計に関する監査権に限定する旨の定めがあるものとみなされます。
  4. 特別決議要件は従前のとおり維持できる。(総社員の半数以上且つ総社員の議決権の4分の3以上の賛成)
  5. 機関としては、総会・取締役・監査役(任意)があるのみとされます。
  6. 休眠会社のみなし解散の規定は適用されません。
  7. 吸収合併や吸収分割における存続会社または承継会社になれませんし、株式の交換・移転を行うこともできません。
  8. 配当・残余財産の分配・議決権について、定款に別段の定めをしている有限会社の場合には、種類株式の取扱いとみなされますので、施行日から6ヶ月以内にみなされた株式の種類・内容・数について登記する必要があります。

有限会社から株式会社への手続

有限会社から株式会社への組織の変更する手続きは、いつでもできますが、新会社法の施行の前と後では、手続きと会社の位置付けに多少の差が生じます。

1. 新会社法施行前の変更(有限会社法の適用による組織変更手続)
  1. 最低資本金制度の適用がありますので資本金(純資産)1,000万円以上とする。
  2. 定款の変更、取締役、監査役の定めを置かなければなりません。
  3. 組織変更決議において定めた資本の総額が、決議のときの資本の総額を下回る場合は、債権者保護手続をとる必要があります。
  4. 登記期間の定めが適用されます。
  5. 有限会社の解散と株式会社の設立の手続によります。
2. 新会社法施行後の変更(新会社法の適用による商号変更手続)
  1. 定款変更手続による株式会社への変更手続となります。
  2. 最低資本金制度の適用がありませんので、資本金額は特例有限会社時の資本金額で構いません。
  3. 旧有限会社(特例有限会社)の解散と株式会社の設立の手続によります。
  4. 商号は変わりますが、実質的に法人は連続しているものとされます。
    但し、特例有限会社としての特例を受けることがなくなります。

確認会社(旧新事業創出促進法による設立会社)の存続の手続

新会社法の施行により、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(旧新事業創出促進法)による株式会社・有限会社の資本金に関する制度は撤廃されますので、現在の確認株式会社や確認有限会社の定款の変更と登記事項の変更による見直しを必要とします。

本法の設立条件であった「解散の事由」の規定の削除の手続きを行うことで、新会社法における株式会社・特例有限会社の適用を受けることができます。また、特例有限会社とせずに、株式会社とすることもできます。

新会社法の主なポイント

  1. 最低資本金の撤廃

    現商法での株式会社の資本金は、1,000万円以上とされ、有限会社は300万円以上とされております。いわゆる最低資本金制度を設けております。

    また、平成14年に施行された「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」(旧新事業創出促進法)において適用を受けた確認株式会社・確認有限会社は、設立後5年以内において資本金充足の猶予規定があります。しかし、新会社法は最低資本金制度が撤廃され、設立に際して出資すべき額に制限がなくなりました。

  2. 資本金額の払込金保管証明

    会社を設立する際に、資本金としての金銭を受入れた金融機関が発行する、払込金保管証明書の交付を必要としております。新会社法は、この証明を金融機関の残高証明書に換えて行えることとしました。但し、募集設立による会社設立の場合は、資本金として受け入れた金融機関が交付する払込金の保管証明書が必要であるとしています。

  3. 現物出資・財産引受けにおける検査役の調査の緩和

    会社設立に際しての現物出資等については、原則として、裁判所選任の検査役の調査を必要としています。例外として、その目的財産の価格の総額が、資本金の5分の1以下であり、かつ500万円以下の場合は検査役の調査が不要とされています。

    新会社法は、その財産の価格の総額を500万円以下であれば、調査不要としました。
    また、有価証券による出資も、市場価格のある有価証券に改正されております。

  4. 株式会社の機関の多様性と株式会社の公開性・閉鎖性の選択

    会社の機関としては、取締役・監査役・代表取締役・総会・取締役会・監査役会・会計監査人・委員会・社外取締役・社外監査役・執行役があります。大会社・中会社・小会社により、その設置には異動がありますが、常設機関とされたり任意機関とされたりしております。

    新会社法では、さらに会計参与という機関を新設しました。会社の規模等において業務執行・会計監査のあり方を加味し、各会社で選択採用できる制度となっています。

  5. 持分会社の制度

    合資会社は、無限責任社員と有限責任社員とから構成され、法人も無限責任社員となることができるようになりました。有限責任社員も業務執行権限や代表権限を持つことができます。業務を執行しない有限責任社員は、業務執行社員の責任追求の訴えの提起を請求できます。

    合名会社は、無限責任社員のみの会社であり、社員1人でも可能であり、法人も無限責任社員となることができます。業務執行権のない社員は、業務執行社員の責任を追及する訴えの提起を請求できます。

    合同会社(LLC)は、社員は有限責任を負うのみとし、会社の運営等のルールは定款による自治を基本とする新しい会社の形態です。

    (参考)有限責任事業組合契約に関する法律
    有限責任事業組合(Limited LiabiLity Partnerahip)は、構成員の共同事業として経営や業務執行を共同で行い、課税は法人に対してではなく構成員(出資者)に直接課税する方法を採用しています。

  6. 商号や登記について

    類似商号に関する規制が廃止されますので、同一市町村内においての同一商号による会社の設立ができます。このことは不正競争目的を有する同一または類似の商号を用いることの防止として、周知または著名な商号の保護規定として、「不正競争防止法」の適用が期待されるようになります。

    また、支店の所在地における支店の登記事項が簡略化されます。又支配人の登記は本店の登記簿において一元管理となります。

    営業譲渡についての、厳格な競業禁止規定を廃止し、競業特約の範囲を自由に契約で定めることができるようになります。

【株式譲渡制限】

「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を得るものとする。」という定めを定款に置くことで、会社の株式の自由な流通を制限することこなります。

  1. 株式の譲渡の承認は取締役会又は株主総会で承認を行う。
  2. 取締役の員数を1人とすることができる。
  3. 取締役の任期を最長10年まで伸張することができる。但し委員会設置会社では1年。
  4. 監査役の任期を最長10年まで伸張することができる。

【主な各機関の設置による特徴】

  1. 全ての株式会社は、株主総会と取締役を設置。
  2. 株式譲渡制限を設ける株式会社は、取締役会の設置は任意。
  3. 株式譲渡制限を設けない株式会社は、取締役会を設置。
  4. 株式譲渡制限を設けない株式会社で、監査役会や委員会設置会社は、取締役会を設置。
  5. 大会社は、監査役や監査役会の設置または委員会を設置し、会計監査人を設置。